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「ありがとうございましたぁ」
時刻は18:50
最後の客を見送り、店仕舞いを始めた。
卯月のCloseは19時。
若干早い気はするが、客足は途絶えたから良いだろう。
茜と掃除をしていると裏口から誰か来たようだ。
「お疲れ様。僕だけど更衣室に荷物置きに入ってもいい?」
「あ、馨ちゃんお疲れちゃん♪入って大丈夫だよ」
「お久しぶりです、馨さんっ。今日もキレーですね♪」
店内に客がいないのが分かると"キレー"なおにいさんの"馨"は口調を変えた。
「クスッ。ありがとぉ、一週間ぶりよね、茜ちゃん。アナタもキレーよぉ。
この後食事でもどう?」
「よろこんで♪」
はしゃぐ茜と馨に和明の呆れた声が届く。
「・・・何云ってんだよ。馨はこの後仕事だろがっ。この馬鹿」
「あらやだ。本気にしたの?いつもの挨拶じゃない」
「「ねー♪」」
「はぁぁ~……馬鹿言ってねぇで夜の仕込み手伝えっ!」
『卯月』は、夜になると『bar-Uzuki-』として営業している。
オネェ言葉の猪亦馨32歳はそこでバーテン兼雇われ店長として働いていた。
勘違いしないよう云っておくが『オネェ店長』ではない。
馨は『綺麗で優しい笑顔のイケメン店長』と女性客に人気なのだ。
オネェに変貌するのは親しい人限定
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