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真っ青な青空
風に揺れる笹の葉
苔むした庭石に白川砂利
控え目な池の錦鯉と池の回りには石菖や千両などの下草
青々とした木々から落ちる何本もの光の筋
その木漏れ日を浴びて佇む、立ち姿の美しい着物姿の女性──────
原色のような、濃淡のはっきりした色は幾重にも重なり、まるで一枚の絵画
湊はその幻想的な風景に魅了された。
横長の10坪程度の坪庭が異世界のように感じて、暫し魅入ってしまったのだった。
「───くん、湊くん?どうした?ボウとして」
「ッ!スミマセン!いや、あの……」
珍しく動揺する湊。
いつからそこにいたのか。恭兵は湊が見ていた先を確認すると、ああ。と納得した。
「あの子は僕の姪だよ。駅北にある『泉呉服店』に嫁いだ姉の子なんだ。
今日は大女将に呼ばれてお茶会の手伝いに来てたんだよ」
「……お茶会だったんですか……」
また坪庭の方を眺める湊に、恭兵はクスリッと目を細めた。
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