その先もずっと

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「送ってくれてありがとう。叶も気をつけて帰ってね。バイバイ」 いつものように家の前で自転車を降りると、なぜか叶も降りたのでビックリした。 「昼休みのこと、説明して欲しい。真尋が室井と付き合ってるとみんなに思われたこともムカついたけど、俺とのことを隠したがる真尋にも腹が立った。真尋はみんなに自分はフリーだと思わせたいのか?」 叶がこんな風に私に対して怒ったのは初めてだ。顔が整っているせいか、叶は怒ると迫力がある。 「そうじゃないよ! ただ、里保が知ったら嫌だろうから秘密にしたかったの」 「え? 佐藤さん?」 叶がわけがわからないというような声を上げた。叶ってそういうところ、ちょっと鈍感みたい。 「私に告白してきた室井くんにあっさり交際をバラしちゃう辺り、叶はちょっと配慮に欠けると思う。里保だって自分をフッた叶が私と付き合い始めたって聞いたら、なんで私じゃなくて真尋なのよ⁉って怒るでしょ?」 「何言ってんの? 真尋を取られないようにライバルに釘を刺すのは当たり前のことだろ? 佐藤さんはもう俺のことなんか何とも思ってないから怒ったりしないよ。今日、俺がバラしたせいで、佐藤さんに何か嫌がらせされた?」 「嫌がらせなんてされてない。でも、気分良くないでしょ? きっと」 「フッた相手に気を遣って、交際を秘密にしておかなきゃいけないなんておかしいだろ? 真尋は室井や佐藤さんの気持ちは気にするくせに、俺の気持ちは考えてくれないよな」 拗ねたように叶が口を尖らせた。 「考えてるよ! 叶だって彼女になったのが里保だったらみんなに自慢したくなるだろうけど、私なんかじゃ恥ずかしいだろうなって」 「俺は真尋が彼女だって言いふらしたいよ! なんでそんな卑屈なこと言うんだよ?」 「だって、叶はずっと里保に憧れてたじゃない。美人で頭が良くてテニスも上手いって。私なんかダメダメだもん」 「え? まさかまだ誤解してる? 俺が佐藤さんを褒めてたこと」 マジかと頭を抱えた叶。 私が何を誤解しているっていうんだろう。 それより、窓からこっちを見てニヤニヤしているお兄ちゃんが気になって仕方ない。 軽く睨んだら肩を竦めて奥に消えて行ったけど、あれ、絶対お母さんに言いに行ったよね。真尋が麻生と言い争っているから、雪が降るんじゃね?とか何とか。
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