その先もずっと

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「俺が真尋を好きになったのは中学1年のときだよ」 「え? 嘘!」 「ホント」 叶は赤くなった顔を両手で隠した。 「小田切先輩の妹なのにトロくて。でも、いつも一生懸命で。笑顔が可愛くて。声も仕草も全部可愛くて。ずっと目で追ってた。頭の中は真尋のことでいっぱいで。話しかけられたら天にも昇る気持ちで」 顔を隠したままでポツポツと叶が零す言葉に、私の顔も真っ赤になっていった。 「照れ臭いのを押し隠して頑張って話すようにしたら、親友だねって言ってくれただろ? 嬉しかったけど複雑だった。どうすれば両思いになれるのかわからなくて、告白なんて怖くて出来ないし。高校は絶対同じところに行きたかったから、県立も私立も全部真尋に合わせて」 叶がそんな風に私のことを想っていてくれたなんて、全然知らなかった。 「高校でバレー部に入ってしばらくしたら、室井が言い出したんだ。『なんか小田切さんって、俺のこと好きみたいなんだよな』って。よく目が合うし、話しかけてくるとき、真尋が顔を赤らめてるんだって」 「は? そんなことないし」 「うん。そこからもう室井の嘘が始まってたんだ。そうとも知らずに俺は何とかして室井の関心を他の女子に向けようとした」 「それが里保?」 「室井が『佐藤さんって綺麗だよな』って言うから、同調して褒めたんだ」 「『真尋なんかよりずっと綺麗だ』って言ってた。事実だけに傷ついたんだからね」 冗談っぽく言おうとしたけど上手くいかなかったみたいで、叶が申し訳なさそうに眉を下げた。 「……それはゴメン。俺は真尋の方が綺麗だと思うけど、室井の目を真尋から逸らせようとして言った。でも、それを室井が佐藤さんの耳に入れたんだ。『麻生は佐藤さんに惚れてる』って。そうやって佐藤さんと俺をくっつけて、真尋の気持ちを自分に向けさせようとしたんだな」 「それってつまり私が叶を好きだってことは、最初から室井くんにはバレバレだったってこと?」 「たぶん。俺はてっきり真尋は室井を好きなんだと思ってたけど」 「あれ? じゃあ、叶は里保のこと好きでも何でもなかったの?」 「だから、そう言ってるだろ? 俺が好きなのはずっと真尋だけだ」 胸の奥にモヤモヤしていた霧がスーッと晴れていくみたいだった。
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