その先もずっと

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クリスマスイブの大型ショッピングモールはすごい人で、叶はしっかり手を握って歩いてくれた。 イルミネーションはトンネルのようになっていて、みんな立ち止まってはスマホで撮影している。 「綺麗だね」 もう何度言ったかわからない。 色とりどりの電飾は風で揺れると一斉に金色に変わり、揺れが収まるとまた元の色に戻る。 ずっと見ていても見飽きない。 「綺麗だ」 そう呟いて、叶はなぜか私の写真ばかり撮っていた。 「2人で撮ろう? そういえばツーショしたことないじゃない」 叶は写真に写りたがらないから、2人で並んだ写真はおろか、叶一人の写真もなかった。 「お願い! クリスマスなんだから1つぐらいお願いを聞いてよ。叶と一緒の写真をスマホの壁紙にしたいの」 両手を合わせて上目遣いで頼んでみたら、案外あっさり写真を撮らせてくれた。 なーんだ。もっと早くお願いすれば良かった。 金色のイルミネーションをバックに写った私たちは、結構お似合いの2人に見えた。 ふと気付けば周りはみんなカップルで、肩に手を回したり腰に手を回したり密着度がハンパない。うわっ、キスしている人たちもいる! 「ほら、ジロジロ見るな」 叶に注意されて慌てて目を逸らせた。 「いやぁ、すごいね。あのカップル、キスしながら自撮りしてたよ。そこまでしてキスしたいのかな?」 「……真尋はしたくない?」 「え? 何か言った?」 「何でもない」 俯いた叶の声が聞き取れなくて、訊き返したけど大したことじゃなかったみたい。 イルミネーションのトンネルを抜けると、ポッカリと闇が広がっていた。 「終わっちゃった」 「帰ろう」 名残惜しい気持ちで振り向く私とは正反対に、叶はずんずん駅へと歩き出した。 まるで早く帰りたがっているみたい。私は叶ともっとこうしていたいのに。 このショッピングモールには広大な駐車場があるから、ほとんどの人は車で来ているのだろう。戸波の駅は閑散としていた。 「帰りの電車の時間を調べておけば良かったね。次の電車まであと20分もあるよ」 ホームの時刻表を見て、ため息が零れた。 あと20分はあのイルミネーションの下にいられたのに。
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