あれから5か月経つけれど

3/5
前へ
/19ページ
次へ
「何?」 室井くんが叶の方を向いて尋ねると、叶は腕組みをして室井くんを睨んだ。 「おまえこそ何? 真尋に何か用?」 「気になる? こんな狭いところで俺たちが何してたか」 意味ありげにニヤッと口角を上げた室井くんは、じゃあねと私に片手を上げて用具室を出て行った。 取り残された私を叶は入口に突っ立ったままじっと見つめている。 それが酷く気詰まりだった。 「室井に何かされた?」 「へ? 何にも」 「じゃあ、何か言われた?」 「……女バレの1年がたるんでるから……ちゃんと言った方がいいよって」 「それだけ?」 「それだけ」 叶は私の代わりに1年を注意したりしない。私が注意しなければ意味がないとわかっているから。 部長同士だからって頼っちゃいけない。 恋人だからって甘えちゃいけない。 わかっているけど、不甲斐ない私は時々叶に寄りかかりたくなってしまう。 「あ、ごめん。何か取りに来たんだよね?」 叶が入口に立ったままなのは、ボールかごを出そうとしていた私が邪魔なのかと思ったのに、叶は首を横に振った。 「ただ、真尋が心配だっただけだ」 ほらね。こんな言葉を掛けられたら、ついつい甘えたくなっちゃうんだ。 「ありがとう。でも、私、頑張るから。今日こそビシッと注意する!」 「あー、うん。そっちも心配だったけど」 「え?」 「何でもない」 ハアッと息を吐いた叶は何か言いたげに私を見たけど、何も言わずにコートに戻って行った。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

140人が本棚に入れています
本棚に追加