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外で様子を伺っていた優希さんは、家からところ狭しと踊り出る真っ白な輝きを目にして、不安を隠せない。
「お姉ちゃんは大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。明君と隠さんならやり遂げてくれますよ」
マスターは変わらず微笑み顔で、優希さんを悟している。
優希さんは不安ながらも、気になることを聞いてみる。
「明さんはなんの妖怪なんですか?」
するとマスターは困り顔で、答えを探している。
やがて正解を見つけたように優希さんを見つめた。
「妖怪ではありません。彼は常世の神様です。優希さんが言ったようにね」
「えっ? 嘘?」
「嘘ではないですよ? 正確には、神に仕えている、いや、仕えていたですが」
そこでマスターは口をつぐんだ。
そこに深い意味があることを、何となく、感覚的に悟った優希さんはそれ以上は尋ねなかった。
「じゃあ天使みたいなものだね」
満面の笑みで優希さんは笑った。
それを見たマスターは意地悪な笑顔で「狛犬ですけどね」と付け足した。
「狛犬ってあの狛犬?」
「その狛犬、でしょうねぇ」
やがて白い輝きは収束するように消えていく。
残ったのは静寂のみ。
一番に動いたのは、お母さんだった。
「紅音!」
「あっ、お母さん!」
それを止めようとした優希さんをマスターは引き止めて、「もう大丈夫ですよ」と、優しく声をかける。
優希さんも間を開けて、理解するように頷くと家の中へ駆けていった。
「さて、私はここまでですね。帰ってきたときの支度をしておかなくては」
マスターはきびすを返すように日向家に背中を向けると、琵助に向かって歩き出した。
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