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まだ聞いてもいない彼女の名を当たり前のように呼ぶ。
出会ったばかりだというのに、昔馴染みの名を呼んだような不思議な感覚を味わいながら、問われる前に歩き出した。
「――承」
「それやめろ」
× × × ×
晴れ渡る空、白い雲。
まるでここに来るまでに見ていた景色が嘘のようだった。
侵食、と言えばいいのだろうか。
病魔に侵されるように徐々に崩壊していくこの世界には、グリームの尽力でまだギリギリ死んでいない土地が存在する。
小国の国土程度のその地域はサンクチュアリと呼ばれ、仮初めの平和の中で人々が暮らしている。
「人いねぇ……」
いくら小国と言っても、一応は国の領土の広さのある土地。
しかも人が普通に生活出来るのがここだけだというのに、余りにも人気がない。
「解。ほとんどの男性が終末戦争で亡くなったことで、人類は減少の一途を辿っています。加えて、ここに辿り着くまでにだいたいの人間は命を落としますし、家族を失い生きる希望が潰えた者が自ら命を絶つことも少なくないため、人口は十万を下回ります」
「分かってたけどな……」
なんというか、深く考えずに設定を決めた結果、穴が見つかった、みたいな……そういう衝撃。
十万って市レベルだぞ。
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