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しっしっと手で遠ざかるようジェスチャーすると、彼女はよろよろと後ずさる。
顔は整ってるのに、初対面での印象が血生臭いとか……。
容姿によるプラスが全て帳消しになっていた。
「そ……そんなに、臭いかなぁ?」
泣きそうな顔で訊ねてくる。
一瞬、配慮しようと思って近づいたが、やっぱり無理だった。
顔を背けると、今度はソフィーに縋るように視線を送る。
「解。臭いです」
「そんなぁっ!」
びしゃり、血溜まりに膝をつく。
うわぁ、悪化した。
馬鹿なのかこいつ……ああ、そういや馬鹿だったわ。
「はぁ……悪かった。起きろよ、アメリア」
悪臭を堪えつつ改めて手を差し出す。
涙を浮かべた彼女――アメリア・アルトドルファーはびくびくしながらそっと手を重ねた。
その手をぎゅっと握り、引っ張り上げる。
「……臭くない?」
「臭いが、まあ、俺のせいであるとも言えるし、我慢してやる……」
我慢出来てんのか分からん。
アメリアの顔を見れば、地味に傷ついていた。
出来てませんね、これ。
思いっきり顔に出てるだろう。
「……あれ? なんで名前……」
「あー……アレだよ、『相手の名前が分かる能力』」
「へぇー! そんな能力があるのね!」
あっれー、信じちゃったよ。
そんな使えねー能力あるわけねぇだろ。
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