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此処は神々が住まう街。人の世界とは、少し違う世界である。八百万の神と言われる程なので、神様は、数多く存在している。花や木、水や海、雷や雪など、様々な神様がいる。それらは住まう地区が違うだけで、同じ世界で暮らしている。幾ら神様でもお腹は空くし眠くもなる。そこは人間と変わらない点と言える。
買い物は宝石や鉱石で行う。この世界では、宝石や鉱石は通貨としての役割を果たしている。装飾品としても利用されるが、通貨として使用される事の方が多い。買い物をすると、大きい鉱石を渡して、おつりは小さな宝石や鉱石になったりするのだ。
宝石や鉱石の神が、この地区には多かった。人間の世界で言えば、炭鉱と言われる場所になる。地面は石畳で、建物は石を積み重ねて作られている。その石の中にも、きらりと光る粒が時たま見えたりもする。この地区に住む、アコヤは、真珠の神である。白を基調とした、石煉瓦の家に住んでいる。ドアノブは、アンティーク調に加工されていた。
「アコヤ、そろそろ買い物行こうよ」
玄関をノックして入ってきたのは、十七歳くらいの見た目をした長い黒髪を束ねた女子である。そのまま中へと進み、寝室のドアをノックする。そこで漸くアコヤは目が覚めてくる。目をしばしばさせて、アコヤは欠伸を噛み殺しながら返事をする。
「ルリちゃんかー。んー、眠いよう……」
アコヤと呼ばれた少女は十歳くらいの見た目をした少女である。眠そうに瞬きを数度しながら、布団を頭まで被る。
「もうお昼よ。いつまで寝てるの?」
枕元に置いてある目覚まし時計は、アコヤが無意識のうちに止めてしまっているらしい。設定された時間に起きた試しがない。
「んんー」
ルリは、アコヤの布団を捲り上げた。眠そうにしているアコヤは、ぼんやりした様子で漸く起き上がった。
「おはよ、ルリちゃん」
「おはよう。もうすっかり昼だけどね」
ルリは、壁掛け時計を指差した。短針は十二を周り、長針は六を指していた。
「ああー、もうこんな時間かあ」
「今度からは、ちゃんと早起きしなさいよー」
ルリはまるで母親の様に、アコヤにそう言うと布団を丁寧にアコヤの足元に纏めた。
「分かってはいるんだけど、出来ないんだよねえ。でも、寝る子は育つって言うし!」
「年齢が子供じゃないから、育たないでしょう……」
<続きは本にてお楽しみ下さい>
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