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しとり、しとり。小雨の音が、儚く響く。
それ程迄に、部屋は静かであった。時折、本のページを捲る音がするだけでそれ以外は何も音がしなかった。集中。彼は、本の世界に吸い込まれてしまったかの様であった。テーブルにマグカップを置く。猫舌の彼の為の、少し温めの珈琲だ。シュガーポットも添えて、彼に声を掛ける。
「珈琲、淹れたよ」
その言葉で彼は現実世界へと帰ってくる。読んでいた本に栞を挟み、私の元へやってくる。
「有難う」
彼は砂糖をいくつも入れて、満足気にマグカップに口をつける。
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