#3 青に染まり、赤に溶けゆく

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 夕暮れ時の少し手前。漸く、太陽の光が和らいでくる。私は、一人砂浜で夕陽が沈むのを待っている。徐々に橙色に染まる雲。ヒグラシの鳴き声が、遠くから聞こえてくる。  昨年一緒にこの夕陽を見ていた彼は、もう居ない。遠い所へ行ってしまった。私はこの浜に心を置き去りにされたまま、一年間を過ごしていた。こういう時彼はどう思うだろうと、ふと考える事が今でもある。私にはまだ、彼の居ない世界を見つめ直す事が難しかった。  押し寄せる白波の音に、私は耳を傾ける。彼の声が、聞こえないかと耳を澄ます。波音の中に彼の声が残っている筈は無いのに、私はそうせずにはいられなかった。
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