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青の廃墟( 1 )
目が覚めると、一面の青。それを背に抱えて、一人の少女がこちらを見つめていた。
「ここはどこですか」
私は問う。彼女は一言、
「知らない」
と答えた。それでは困る。私は辺りを見渡した。
石の煉瓦で組まれている壁には、蔦つたが絡みついている。地面はひび割れたアスファルトに覆われていて、隙間からは雑草が一生懸命生きようとしていた。
しかし、そんな小さな生よりも私の目に飛び込んでくるのは、一面の青。壁も、床も、天井も、全てが青に染まっているのであった。どうやら、外は相当な快晴のようだ。目が覚めるような青空を、割れた窓ガラスの破片が反射して、部屋を青く染めているらしかった。
(ここは、青の廃墟なんだな)
すとんと、私は納得した。この状況を受け入れる他ないと判断したのだ。となると、次の疑問は、先程から私を穴が開くほど見つめている一人の少女だ。
「君は、誰ですか」
「私は、人間」
そうじゃない、と私は思う。君は何ですか、ではなく、誰ですか、と言っているのだから、名前を言うのが普通ではないだろうか。随分めんどくさい人のようだ。
「君の、名前は、なんですか」
「私の名前は」
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