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脇はぴたりと閉じられ、細長い腕が体側にくっついている。「気をつけ!」と直立不動になっているのをそのまま後ろに倒したみたいなまっすぐさだった。なんというシュールさだ。そしてこんな変なカタチなのにきれいだった。いや、きれいだからこそ、とても変。
普段はレングス長めの流行りの髪で隠れている完璧なかたちの丸いおでこが露わになっている。少し顎があがっているせいで、鼻がつんと上を向いていて、そのせいでまる見えになっている鼻の穴の形さえも完璧にきれいだし、職業柄すべてのケアに怠りがないから、毛穴ピカピカ、鼻毛なんか存在しない美貌の三十一歳だ。
流助といえば、髪はくせ毛でいつも変なうねりがある。またアレルギー体質のせいで常になにかしら肌にトラブルを抱えている。それをついついかきむしってしまうものだから、治りが悪い。おまけに自分の身体の操縦が下手で、頻繁に転ぶしぶつかる。いろんなところに打ち身や傷がある。
そんな傷だらけの流助にとってイオという存在は、ミラクルのかたまりだった。同じ人類、同じ男なのにつるんときれいに整いすぎている。信じられない。姫みたい。
と、天使(赤ん坊のエンジェルじゃなく、ローブを身につけている大天使さまだ)みたいに眠っているイオがぴくんと身体を痙攣させ、突然「りたごるらお」と言った。
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