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流助は予想外の寝言にふひっとおかしな声をあげ、そのまま悶絶する。鳥飼は必死に「しーっ、しーっ」と言うけれど、だからそんなのは本当に逆効果でしかない。シーツに顔をおしつけたが、笑いをこらえるのは無理だった。「りたごるらお」っていったいなんだ。
流助がいくら悶えようが、意味の分からない寝言を言った当の本人は、すうすうと眠り続ける。その様子とひいひい笑い続ける流助に鳥飼もたまらず、とうとう声をたてて笑いだした。
「しーっ、鳥飼さん、しーっ」
鳥飼にとっても「しーっ」は流助と同じく逆効果だったようで、笑いがとまらない。それなのにイオは変わらずベッドの上の「/(スラッシュ)」のかたちで微動だにせず、それがまたおかしさに拍車をかける。
「イオって、いつもこんな風に寝てるわけ?」
「いや、わたしも初めて見ます。結構寝相が悪いなとは思っていましたが、なんでしょうね、こんな、ピンとまっすぐに」
一緒に暮らして一年もたとうとしているのに、三人の生活リズムはばらばらだ。
判で押したように平日の朝出かけ夜帰ってくる鳥飼、家を出る昼前までぎりぎり寝て夜帰る日と、今日のように夕方ごろに出て翌日明け方帰るような日のある流助、イオにいたっては、仕事の内容次第で法則すらない。
イオの寝相をこんな風にしみじみと見るなど、一緒に暮らしていてもなかなかレアだった。
「はあ……でも、なんというか……ほんとにかわい……」
「ですです」
ようやく二人笑いが落ち着くと、いくら笑ってもちっとも目を覚ます気配のないイオをもう一度しみじみと眺めた。
イオの職業はモデルだ。肉体の管理維持も仕事のうちで、だからいつもかっこいい。美しい。
そんなパーフェクトなイオが変な恰好で寝ているという面白さが過ぎ去ってしまうと、今度は「愛おしい」がどんどん湧きあがってくる。
「こんな風に寝ているイオくん発見して、早く帰ってこないかな、って思って待ってたんです。流助さんに見せたくて」
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