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確かに誰かと共有しないと心のやり場に困るかわいさだった。家庭内限定のイオのへんてこな寝姿。
「(鳥飼さんって、今日はこのまま朝まで起きてるんですか)」
流助はさっきまでの馬鹿笑いから一転、急にひそひそ声で尋ねると、鳥飼もひそひそ返す。
「(ええ。仕事の本を読もうかと思います)」
鳥飼は答えながら愛おしそうにイオの髪に触れる。イオの柔らかな唇はうっすら開いており、また何かしゃべりだしそうだった。
「(それ急ぎ?)」
流助は、意図をもって鳥飼を見つめた。鳥飼は数秒思案して「……ああ」と流助の気持ちをくみとると、「(急ぎじゃないです)」と穏やかに答えた。
流助は、イオ越しに鳥飼のフィルタグラスに手をのばす。
鳥飼は自分のフィルタグラスに触れる流助の指に手を重ねた。進むことにわずかにためらいがあるようだった。
しかし最終的に鳥飼は手をはなし流助の好きにさせた。流助は鳥飼のフィルタグラスを両手でゆっくりと取りはずす。期待で身体がむずむずする。
鳥飼の顔から遮るものを奪ってしまうと、ぞくんと身体に震えがはしる。
出現した二つの瞳は本当にため息が出るほどきれいだった。
そしてもう十分すぎるほどに獰猛だった。
特殊グラスをつけている時の、よく動く眉や常に微笑みを作っている口元が醸し出す陽気さや謙虚さがそこにはぜんぜんない。先ほどまで感じていた家電的な安心感は、欲情によってあとかたもなく消え去る。
流助は生唾を飲んだ。
流助が暴いたのは情の薄そうな切れ長の目で、それは薄闇の中完全に瞳孔が開いてしまっている。虹彩はうっすら青く輝いている。
αの瞳だった。
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