第九話 運命を、笑え!!

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「もう始まるよ!」  呼びにきた巌太を久しぶりに抱っこしてやった。恥ずかしがるけど嬉しそうだ。大きくてよろめきそうになるのを、なんとかこらえる。最近流助と巌太の服のサイズが近くなってきて、成長を感じる。αの巌太は、平均よりだいぶ大きい。流助の小柄な身体など数年内で簡単に超えてしまうだろう。  それからイオの膝を恥ずかしがるようになった。ちょっと前まではイオにべたべただったのに。  下の双子とリラは、なにやら追いかけっこをしいていて騒がしいが、テレビの前のソファに、巌太をはさんで鳥飼とスタンバイした。  生放送の夕方の情報番組がテーマ音楽とともに始まった。 「がんばれイオ!」  まだ画面にうつっていないイオをコールする。  ゲストの名前が表示され、画面にイオが登場すると三人ギャーと叫んで立ち上がった。双子とリラが何事かとやってきた。ソファにのぼってきて、それぞれの膝にちょこんと座る。リラは大好きな巌太の膝の上だ。  まずはイオのバイオグラフィーが紹介された。  十七歳でのデビュー、当時のファッション誌が画面いっぱいにうつされ、観覧席のお客さんと同様、流助たちも「おおー」と感嘆の声をもらす。 「わかーい」  すごくかっこいい。  次にたくさんの小さな広告が一覧表示にされたパネルがスタジオにもちこまれた。中にはぱんつ仕事も混ざっている。 「イオさん、あんった、仕事選んでないやん」  関西弁の司会者がつっこむ。客席から笑いがおこる。 「これなんか、めっちゃ結婚したなるわ! こんなんすぐ登録いくわ」 『出会いの少ないぼくたち  本気で結婚を考えています』  司会者は広告のコピーをわざとらしく読み上げた。 「その時もう結婚してました」 「詐欺やん! 俺、この人と結婚したいねん!」  どっとウケる。  トークは軽快にすすむ。仕事を受けてからずっとナーバスになっていた割に、テレビにうつるイオはまったく緊張しているようにみえない。でも生中継の高視聴率番組なんか初めてのことだ。見てるこっちは固唾をのんで見守る。がんばれ、イオ。
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