第九話 運命を、笑え!!

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 動画が表示される。身を乗り出すイオの画面がワイプになった。  表示されたのは、イオの上半分は床、下半分はベッドという姿だった。さっきのアクロバティックな寝相があながち演出ではないことを物語っていた。  くすくす笑う撮影者の音声。 「イオくん、ひどいです」 鳥飼が声だけの出演。  流助と鳥飼は画面の小さなワイプで口をあんぐり開けているイオを見て、ゲラゲラと涙を流して笑った。大人二人があまりにも笑うので、双子+1はひきまくってる。 「しっ、これから言うよ!」  巌太が叫ぶ。二人、ひーひー言いながら無理やり笑いをこらえて、その時を待つ。  画面の動画のイオがわけのわからない寝言をしゃべりはじめる。 「りらとったばるけにおん、こらえれたくりゅす」  イオは顔をおおい、真っ赤だ。クールな美貌がめちゃくちゃかわいらしく崩れて椅子からずり落ちそう。半死半生。 「……きいてない……」 「イオさん、寝言言ってるって認めますか!? 今すぐ家族にちゃんと言って!!認めて謝って!!」  司会者が迫る。 「ごめんなさい……寝言……言ってました……ええと、愛してます許して」  流助と鳥飼は再びハイタッチした。巌太は二人にとびつく。つられてあまり意味のわかっていない双子とリラもきゃあきゃあ言いながら乗ってきた。  画面の中の会場も司会者もリビングの大人も子どもも笑い転げた。携帯は先ほどから通知アラートがすごい。流助の両親、保育園のパパママ、鳥飼の両親、鳥飼の職場、さまざまな人たちが、「見たよ」「おもしろかった」「あれどこまでほんと?」とメッセージを送ってくる。  ネットはすさまじくバズってる。クールな美貌のイオが真っ赤になって恥ずかしがるそのギャップがかわいすぎると、みなハートを撃ち抜かれている。 「イオ怒るよう」  リラだけが心配して、みんなをたしなめてまわっている。  番組終了後しばらくすると「よくもやってくれたな!」とイオからメッセージが届いた。添付の写真は番組観覧者と司会者、スタッフと撮った自撮りで、「すぐ帰るから待ってろ!!お土産なにがいい? 欲しいものある?」となぜかゾンビのスタンプだった。 end    
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