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「イオ、そんな怒んなくてもいいじゃんよ。こっちだって別に忘れたくて忘れてるわけじゃないし」
「鳥飼さんが流助のフェロモンの影響を一番受けるんだよ? 鳥飼さんが優しいからってあんま調子にのんな」
流助もイオも鳥飼を「鳥飼さん」とさん付けで呼ぶ。それには最初いつまでたっても二人に対し敬語の鳥飼をからかう意味が含まれていた。
それがすっかり定着してしまった。
「誠さん」と下の名前でよぶときもあるが、それは二人ともなんとなく甘えている時にそう呼ぶことが多い気がする。
流助は、神経質な教師のようなイオの言い方にうんざりして、はあっとわざとらしいため息をついた。
「っ、なにその態度」
案の定イオがキイッとなって、一触即発状態になる。するとはらはらしながら二人の様子をうかがっていた鳥飼が、あわてて間に入った。
「あっ、その、次、忘れないようにがんばればいいんじゃないでしょうか。ね?」
「ほら、鳥飼さんがいいって言ってるしー」
「鳥飼さん……もうっ」
流助を増長させる鳥飼の何の問題解決にもなっていない発言に、イオの機嫌は悪くなる一方だ。
「鳥飼さんは流に優しすぎる。はっきり言ってやらないと困るのは流助だし鳥飼さんなんだからね?」
イオの矛先が鳥飼に向かった。うっとなった鳥飼は「すみません」と眉毛ハの字で謝罪した。
とばっちりを受けて謝る鳥飼の本気でしょんぼりした眉毛を見て、怒っていたはずのイオも不貞腐れていた流助も、ついふきだす。
「鳥飼さん、イオのことビビりすぎ!」
「もー、なんですぐ謝るかなー」
全員が笑ってしまい、イオが一瞬怒るのを忘れてしまったところ、流助がすきをついてごろにゃんと、イオの膝に頭をすりつける。
「イオ、ごめんなさーい」
「っとに、もー」
イオは膝の上の流助をがんがん揺さぶった。イオだってあまり鳥飼のことを言えない。だって年下の夫はこんなにもかわいい甘え上手だ。つい許してしまう。
ぐわわと揺さぶられて笑う流助の頬をつまむ。
「ほんと気をつけて」
それからむにむにと頬の肉で遊ぶ。むにむについでにちゅっといつものやつをやれば、ケンカは終了。三人で美味しいものでも食べに行こうかってなる。
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