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家庭に平和が訪れると鳥飼は心底ほっとした顔をする。争いごとが根っから苦手なのだ。
そんな鳥飼はαで、αの目はセックスアピールの塊だった。「目で落とす」というのは、αのためにあるような言葉だ。
αの強いまなざしに魅了されない者はいない。αに生まれたなら、その魅力的な瞳を武器に人生を楽しむのが当たり前。隠すなどという発想は出てこないのが普通だ。
なのに鳥飼は、自分の瞳が人目にふれることを好まなかった。見られることはもちろん、見ることによる影響も必要最低限にしたいとして、特殊な加工がなされた真っ黒のフィルタグラスを常に着用している。
ただのサングラスにしか見えないそれをつけると、鳥飼がαなのかどうかは一見わからない。αと付き合いたいと望む人々の一目惚れから逃れようという魂胆だ。
また、鳥飼にとって魅力的な男性や女性と出くわした場合、フィルタをつけることでワンクッションおくことができるメリットがあった。αは身体能力もすごいが、ヒトフェロモンの感知能力も並外れている。それは裏を返せば、気分ではない時にも他人のフェロモンの影響を受けてその気になってしまうということだった。
昼も夜も家庭内でもそのサングラスタイプの特殊アイウェアをつけているのは、だいぶ変わっている。そのうえ、本来表情をクールにみせるアイテムのはずが、なぜか鳥飼の顔を親しみやすくさせていた。目が隠れている分、眉と口が雄弁に動いて、鳥飼を陽気でファニーなキャラクターに仕立て上げている。
「自分がαであると思われるのも思うのも、あんまり好きではないのです」
変なα。
流助は鳥飼と結婚して、αもいろいろいるんだな、と知った。
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