第三話 親に紹介したい系

10/16
前へ
/154ページ
次へ
「運命の番」とは、αとΩの本能的なつながりだ。 「運命の番」であるαとΩは、出会った瞬間お互いがそうとわかるらしい。すべての倫理や規範をなぎ倒し、出会ったが最後、一生離れられなくなる。好きとか嫌いとかの理屈を超えた本能だ。  しかし実生活でそのようなカップルに遭遇することはめったにない。もともとαとΩは希少な存在で、αとΩのカップル自体が少ない。「運命の番」ともなると都市伝説並みだった。  αの一族に生まれた鳥飼でさえ、遠縁のじいさんがそうだったらしいと聞いたことがある程度で、実際に見たことはなく、人口に占めるその割合は0.01%ともいわれている。  しかし、「運命の番」への世の中の関心は高い。 「運命」という響きが随分ロマンチックに聞こえるせいか、繰り返しドラマや映画のテーマになる。性交中にαがΩの首筋を噛むのが「運命の番」として交わす契りだというのも、人々の想像をかきたてる。  もしタイプでもなんでもない相手が自分の運命の番で、そんな相手と出会ってしまったらどうするのだ。そんなわけのわからない本能、困るだけだ。しかし、誰もそんなネガティブな側面を考えたりしないのだ。  それにしても安易に尋ねるやからは、鳥飼と流助が「運命の番」だとしたら、イオの立場がないということに気づかないのだろうか。  酒の席でいじられる程度の話題なので、いちいちそれを言いたてるのも大人げない。しかし聞かれる度に鳥飼は、イオが気分を害しているんじゃないかと、はらはらする。その質問をする者の神経を疑う。   「でも、いいね、マッチングサービス。わたしも登録しよっかな」  当の女性は、鳥飼の気持ちなどおかまいしに、うっとりとイオの美貌を見つめながら言う。それを見た鳥飼は怒るのもばからしいと思いつつ、気持ちのやり場がなかった。流助はにやっと笑った。 「誰を紹介されるか会うまでわからないんだよ。それからチャンスは一度だけだ。気に入らなければ次の人、とかできないんだからよく考えたほうがいいよ」 「え、でも気に入らなければ断ってもいいんでしょ?」 「いいけど一回断ればもう紹介してくれないよ」
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

820人が本棚に入れています
本棚に追加