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は? と流助は驚いて聞き返す。
「なんでなんでなんで?! なーんもしなくてもそのまーんまで二人は俺の自慢だよ! ……俺、今だってこの人たちが自分の夫です! って叫びまわりたいくらいだもん。二人を見せびらかすことができて、今夜はすっごく嬉しかった」
興奮気味に飛び跳ねながら言った直後に、案の定、何もないところでつまづく。
「うわっ、あぶない」
当然の結果として流助に腕をあずけていた鳥飼も一緒にころんだ。
「ケガは、ケガはないですか」
一番派手に転んだのに、真っ先に鳥飼は流助を心配した。
「ぷはは。平気平気……あの、逆にごめんな。悪気はないんだけどさ、無神経で雑な連中だから」
流助の言葉に、鳥飼もイオも笑ったまま首を横にふった。三人だいたい同じようなことを考えていたとわかると、勇気がわいてくる。まわりはいろんな憶測をする。しかし当事者である三人がしっかりとしていれば何を言われようが大した問題ではない。
「もー、しょうがないなー……う、わ、ぎゃは」
イオが二人を助け起こそうと試みて、案の定二人の上に転んだ。半分そうなるのを予測してわざと転んだ。深夜の公道で三人ゲラゲラ笑う。通り過ぎる人が騒がしい三人を迷惑そうによけてゆく。
誰もいない家に帰ると三人で「ただいま」を言う。一番家がほっとする。
「キスしていいですか」
鳥飼が衝動的に、しかし生真面目に尋ねると、まだ靴も脱いでいない二人はそろって笑いながらキス待ち顔になる。フィルタグラスをはずすと、二人からたちのぼる色が見えた。
流助は橙。イオは薄いピンク。
フェロモンに色がついて見える。
こんなにも見えすぎると、日常生活に支障をきたす。だから鳥飼は常にフィルタグラスをつけている。外はもちろん、家にいればなおさらその装備は必要になる。
そうしなければところかまわず発情してしまう。夫たちにこそ、できるだけ迷惑をかけたくなかった。
だが、もう夜で、今日はちょっと気疲れしていて、酔っぱらっていて、二人が優しくて、キスを許可してくれる。
少しぐらい何かを間違えても許される。
順番に唇を合わせた。たまらなくなる。遮るものなく鳥飼の目にうつる二人はひどく魅力的で、鳥飼の心はおだやかではいられない。
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