第三話 親に紹介したい系

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「その……今日、いいですか」 「……うん? ……あ、……うん、いいよ」  イオが、真正面からの切実な鳥飼の問いかけに、恥じらうようにうなずく。瞬間、薄いピンクがほんのり濃くなる。  鳥飼の襟を直すように触れた指。  爪先にさえβ特有の淡いフェロモンが、色づいて見える。  そのしぐさには愛情が感じられ、同時にこめかみが痛むほど色っぽい。美しい人をその場で丸裸にし、ずぶずぶに犯して泣かせたい。快楽と痛みを同時に与えて狂わせたい。 「俺もいいよ!」  と、エロいムードをかもしだすことなく流助も元気に返事をした。イオがプッと笑い、鳥飼は思わず我に返って「すみません」と謝った。 「鳥飼さん、なんで謝るの」 「謝る意味がわかんない」  それは鳥飼が何を考えているか二人とも知らないからだ。鳥飼の頭の中を知れば、そのひどさに眉をひそめるはずだ。鳥飼はそう思ったが、そんなことは口にしない。ただ困った顔でごまかすように笑って罪深い自分を恥じるだけだった。    翌朝、何事もなかったようにいつもと同じ時間に家を出る。 「いってきます」  小さい声でいうが、だれも返事をしない。  それもそのはず、昨夜は三人、明け方近くまではめをはずした。そのせいで二人はまだベッドで夢の中だ。  鳥飼はいつもどおり起きて、いつもどおりコーヒーをいれ、ゴミをまとめて出勤する。  歩きながら昨夜の余韻にひたる。ぱっ、ぱっと二人の笑う姿、じゃれあう姿がスライドショーのように脳に浮かぶ。  それには痴態も混ざっている。  三人でとても長く、空が白むまで時間をかけて愛し合った。  はじめる前、イオは「ちょっと待って」と言うとサプリメントの錠剤を自分の舌にのせた。リビングのテーブルにピルケースにいれていつも置きっぱなしになっているただのヴィタミンだ。  鳥飼がイオの突き出した舌先のものを器用になめとると、舌で流助にリレーした。流助はエサを与えられるひな鳥のように口うつしでもらい、こくん、とのみこむ。  かわいいのどぼとけが動く。それをイオが満足そうに見つめる。  イオは流助の口内炎がなかなか治らないのをずっと気にしているのだ。  それが引き金みたいになって、存分にむさぼりあった。  鳥飼とイオが向かい合ってお互いの胴をはさむように脚を投げ出すと、その上に羽みたいに軽い流助がのった。
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