第四話 そうなったのには理由がある

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 二人にばれてしまう。  鳥飼の野蛮な瞳の色を見れば、下心にまみれた心がつつぬけになってしまう。  それは、一番あってはならないことだった。   「……なんだかえらそうにいろいろ話しちゃったけど、たとえ他の誰かと経験があったとしても、何の役にも立たない気がします。だってぼくらだってするの、初めてですもんね」  鳥飼の心のうちなど知るわけのないイオが、窓の外、どこか遠くを見ながらひとりごとみたいに言った。  鳥飼はドギマギして、のどの奥でああとかううとか、間抜けな声をだした。気の利いた返事一つできず、フィルダグラスに隠れた安全な場所からイオを盗み見た。  イオと初めてする。イオの裸を初めて見る。もちろんその時はフィルタグラスをはずして。ナマの目線で。 「よ……、よろしくお願いします」 「こちらこそ」  その日二人の経験者は、あまり気負いすぎると失敗しやすい、という点で同意し、とりあえずワンクッションおくために三人でスパに行ってみることに決めた。お互いの裸にちょっとでも見慣れ、スキンシップしておくのが目的だ。  某所、レジャースポットであるスパは、水着ゾーンと普通の温泉とにわかれている。昼間は気楽な雰囲気で家族連れや子どもたちでにぎわうが、夜は結構大人っぽい雰囲気になる。  三人は友だち同士のような顔をして、エロさなど皆無の昼の部に訪れた。  当然鳥飼はフィルタグラスつけっぱなしである。日差しも強いので屋外施設ではサングラスのようなそれは違和感はない。しかし屋内に入るといただけない。鳥飼はそれを予想して、特殊加工のコンタクトレンズを装着する周到さだ。  水着ゾーンでさんざん遊んでお互いの半裸に慣れ、最終的に全部脱いで温泉にはいった。 「俺、ちんちんも子どもサイズなんすよ!」  露天風呂で自分の性的な情報を、あけっぴろげに開示する流助に対し、鳥飼はとても恥じいってしまった。 「わたしは、逆にご迷惑かと……」と大きな身体を縮こめる。立派だった。恐縮している人のものとは思えないふてぶてしい大きさをついにさらす。  すげえーと流助は小学生男子のような反応をした。イオはちょっとひいていた。そして二人はイオの脚の間に同時に視線を動かし、しみじみうなずいた。 「へえ~」 「ほ~」
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