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寝室の前まで来ると、鳥飼は流助に眉で「目くばせ」し、そっとドアをあけた。
鳥飼とイオと流助の三人が住むマンションの寝室は、面積の四分の三近くがキングサイズのベッドに占領されている。男三人が横になってもらくらくの、ばかみたいに大きいやつ。
フロアスタンドがついているためほのかに明るい室内に、流助と鳥飼はそっと入った。
その正方形に近い巨大なベッドを大胆な寝姿で一人占めしているのは、流助のもうひとりの夫であるイオだった。
イオは広々とした空間を斜めに分断するように、つまりベッドの一つの角に頭、対角線にあるもう一つの角に足というような位置で、眠っているのだった。
「……わ……あ、迷惑な寝方……しかも超まっすぐ……」
寝相としては不自然なほどぴんとまっすぐな仰向けのカタチ。上から見るとベッド上の対角線だ。
ベッドがいくら広くてもこれでは他の二人が寝にくい。この場合イオと並行になって斜めに寝るしかないだろうが、身体の小さい流助ならともかく、鳥飼は確実にはみだす。
流助は笑いをこらえながら、そろりとベッドに上がって正座した。鳥飼も反対側で同じように膝をついた。二人でイオを眺める。上から見たら三人はきっと%の形になっている。
「(……ね、かわいいでしょう)」
鳥飼が小声で、しかし興奮気味に乗りだすようにして言う。ぶんぶんと首を振ってうなずいて、流助はとても健やかにまっすぐに眠っているイオを見つめた。
「眠り姫みたい。死んでるみたいに眠ってる」
鳥飼はそれを聞き、しばし思案する。
「それを言うなら白雪姫じゃないですか。確か毒りんごで仮死状態になります。眠り姫は針でさされて……まあ眠り姫も仮死状態みたいなもんか……」
「とにかくかわいい……」
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