嫉妬

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「先生、提案なんだけどさ」 「……提案とは?」 省吾は真奈の目線の高さまで珈琲カップを持ち上げる。 「俺が先生に恋を教えるから先生は俺に珈琲の美味しさ教えて?」 「なんで珈琲が出てくるの」 「だって先生俺がミルク入れて珈琲飲んだりしてると『珈琲の味が分からないとはまだまだだね』って言うじゃん」 「まぁそうだけどどうしろと?」 「とりあえず珈琲飲んで」 省吾の言葉に真奈は一口だけ珈琲を飲んだ。省吾はすかさずキスをする。 「んんぅ……ふっ……ちょっとベタ過ぎない?」 真奈は真っ赤になりながら省吾を睨む。 「ベタ過ぎでもドキドキしてるのダーレだ?」 省吾は悪戯っ子のような笑みを浮かべて言う。 「省吾くんがこうも意地悪だとは思わなかったよ……」 「意地悪させてるのは先生だろ?さっきからスマホとプロット用紙に嫉妬してんだからこれくらいはさせて」 「それはその……ごめん」 「本当にすまないと思ってるなら、真奈からキスして?」 「えぇ!?」 「そんな驚く事?」 省吾は真っ赤になったほっぺたを両手で覆う真奈を見て苦笑する。 「笑わないでよ、私だってキスできるんだから……」 「じゃあはやく」 省吾はそう言って目を閉じる。 「えぇ……じゃあ、失礼して……」 真奈は深呼吸をしてから省吾の唇に自分の唇を重ねた。 それはほんの一瞬で、省吾が目を開けると涙を目いっぱいに溜めた真奈が省吾を見つめている。 正直物足りないけど仕方ないか……。 省吾はそう思いながらも真奈の額にキスを落とした。 「よく出来ました」 数日後。 省吾がスマホで小説投稿サイトを見ると、涼宮瑠璃子の新作が投稿されていた。ジャンルは純愛小説。 省吾が新作を読もうとすると、真奈からLINEが来た。 “今回省吾くんのおかげでいいのが書けたよ、ありがとう” どうやら自信作らしい。 省吾はどんな作品になっているのか期待しながら桜田瑠璃子の新作をタップした。
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