100円玉の友情

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「なぁ、優(ゆう)、100円貸してくれよ。10円はあるんだけどさ、100円たりねーんだ」 「……仕方ないなぁ。ねぇ強(つよし)、そういうのは足りないんじゃなくて『確信犯』って言わない?」 肩を組み小銭をせびる俺に、幼馴染の優は笑いながら100円玉を差し出す。 「ちゃんと返してよ?この前みたいに、煎餅1枚とか、微妙なお返しじゃなくてさ」 「……あれは、800円の煎餅だったんだよ」 物心ついた時から俺と優の家は隣同士。 隣同士とはいえ、優の家は地域の名家。 大きな庭、そして門。 その隣の、まるで優の家の倉庫みたいな建物が、俺の家だった。 別に、家の大きさがどうとか、俺は気にしたことがなかった。 優も、貧富の差など別段気にせず、俺たちは同い年であることを喜び、まるで双子の兄弟のように育ってきた。 学業は優秀、端正な顔立ちでクラスの人気者。でも運動はさっぱりな優。 馬鹿で粗雑。でも運動だけは人並み外れて出来た俺。 テスト前には俺は優の机の前に張り付き勉強を教わり、優がいじめられっ子に泣かされたときは俺がいじめた奴を泣かせに行った。 そんなこんなで、ふたりは『幼馴染』のまま成長し…… あっという間に、24歳になった。
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