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不倫相手と言われた小夏さんは高校を卒業後、家の都合で結婚させられ町を出たが離婚して再び帰ってきたそうだ。
そして小さい町では、あの二人は長らく恋人同士だったということまで高校生の自分にまで教えてくれる親切な人たちが何人もいる。
結婚を約束していたのに無理やり別れさせられたらしいけどねと付け加えることも忘れはしない。
それからと言うもの父と顔を合わせる度に“二人で歩いていたと言うのは本当か”
そう問いただしたい衝動にかられたが、想いを口にまで出す勇気は無いまま数ヵ月の月日が経っていった。
その内に、あの真面目一辺倒の男が昔いくら惚れていた女とは言え、不倫などするはずがないと表面上噂は消えていった。
母も表向きは何も言わなかったし、近似の人たちと話す時も、まるで気にしていない風を装っていた。
時には自ら、あんな噂が立って……などと言い出すことさえあったほどだ。
しかし、その裏で母は父を監視し続けていた。
姿が見えないと、いつまでも父の名を呼び続け、少しでも帰りが遅いと小夏さんのところへ行っていたのかと父を問い詰めた。
そんなことが繰り返されたある日、小夏さんが亡くなった。
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