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都会とは違う慣れない田舎道で運転を誤ったようだった。
気になることはいくつかあったが、それ以上のことを聞くのはためらわれた。
立場上と言うこともあったが、その日の朝早く汗まみれになり荒く浅い息を繰り返しながら帰ってきた母の姿を思い出したくは無かったから。
小夏さんという人が亡くなり葬儀に夫婦揃って参列したことで折り合いが付いたのか母は次第に落ち着いていったように見えた。
しかし、それも束の間のことで何の前触れもなく、父が小夏さんの後を追ったのだ。
母は完全に壊れてしまった。
小夏さんが事故をした場所で父も亡くなっていたそうだ。近くに遺された手紙には家族への謝罪が書かれていたと手紙を回収した顔馴染みのお巡りさんが教えてくれた。
その他にも何故か小夏さんへの謝罪や想いが書かれたようだが母の手元に渡った途端、燃やしてしまったので詳細はわからないままだ。
小夏さんの事故は本当にただの事故だったのか。
父は追いかけた小夏さんに会えたのだろうか。
母は未だに父に会えずにいるのではないだろうか。
だから、手紙と共に燃えてしまった後も母は20年以上もの間、毎年この日になると父を探して叫ぶのではないだろうか。
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