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しかし、川原からいつもの草むらを通って水門に行くのはほんの少し勇気が必要だった。何せ完全に真っ暗なのだ。街灯もなく月明かりは時々翳ってあまり頼りにならない。草は胸よりも高い位置まで生い茂っていて、先も見えない。それでも何とかいつも通りに木々を抜けて水門の手前にたどり着く。下を流れる川は黒く、水の音はいつもよりも大きく聞こえる。やはり朝になるまで待つべきなのではないだろうかと理性が説得をはじめる。
しかし、せっかくここまで来たのだ。プレハブは間近だ。最後までやり遂げようと水門に昇るための梯子に手をかける。
水門を渡り切り、プレハブが見えた瞬間、人がいることがわかった。小屋の曇りガラスから明かりが漏れているからだ。ひどく蒸し暑い夜だ。首や脇、体のあちこちに浮かぶ汗の粒が肌を伝う。
こんな時間に誰がいるのだろうか。ホームレスかもしれない。
そっと近づいてゆくと、中から僅かに声が聞こえた。俺はほんの少しだけドアを開けた。
「もうやめて・・・・・・」
少し高めの掠れた声は、三島朝日のものだとすぐにわかった。
俺は屈み込んで部屋の中を覗き見た。
割り拡げられた細い足の間に男の体が入り込んでいる。
何をしているのだと俺は中腰になった。
「やめて」
男の腰がこちらを向いて動いている。床から少し浮いた朝日の白い尻に赤黒い男のペニスが突き立てられている。それが出たり入ったりする度に、抱えあげられた朝日の足が揺れているのだ。
「お前も気持ちよくしてやるから、もっといい声出せよ」
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