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小玉の携帯に吉本から連絡があったのは、昨日。現場の大詰めのための残業で、バルーンライトの光の中、重機に乗ったままで資材を待っていた時だった。
「明日、あいてる?」
残業、休日就業が続いていて、この現場が終われば三日働くなと御達示があったから、休みの可能性があった。
「現場がはければ…」
曖昧な答えをした。
実際、仕事は終わらず、休めるはずだった今日も作業をして、夕方になってやっと仕舞いになった。
もうすぐ夏も終わりだが、汗だくの作業着のままでは出掛けられない。遅刻必至だから行けそうにないと電話をすると、遅刻で良いから来て欲しいと言われた。
サッと汗を流して、白い無地のTシャツに黒いデニムに着替えた。
いかにも気合いが入っているようには見えないようにと思いながら、赤いワイヤーネックレスをつけて、髪のトップを立てた。
この頃、後頭部が少し薄くなってきてるのが気になる。立てた髪を流して隠す。
30分遅れで着いた合コンの場所はトンカツ『こぶた』だった。
どんだけ自虐なんだ…と、席を見て引いた。
主催の吉本も、その友人二人も小太り。似た体形だというのに揃いもそろって似たり寄ったりな縦縞の半袖のポロシャツに、色褪せたジーパンをはいている。
集まった女の子4人のうち2人は小柄で軽くぽっちゃり、1人は巨漢、1人は背が高いぽっちゃりだった。
吉本が小玉を誘った理由はわかっている。小玉はぽっちゃり好きだし、そこそこイケメンだからだ。
しかし、小ぶたばかりの席は微妙な空気で、声をかけるのが躊躇われた。
「お~、小玉!」
そのまま引き返そうかとしたところで、吉本に気付かれた。
「遅れてすみません」
小玉は爽やかに笑ったつもりだった。
実際は小玉の切れ長の目が怖いのか、女の子たちは引き気味だった。
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