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明日から休みだ。
終電まで2時間あまり。家にこのまま帰るのも寂しいが、連日の仕事で疲れてもいた。
ベンチのど真ん中に大の字で座って、ぼぅとしていると小ぶたが一匹通った。
いや、岡部だ。
泣いているようだ。
「岡部くん?」
小玉が声をかけると、岡部はちょこちょこと可愛いしぐさで駆け寄ってきた。
「今日は忙しいところありがとうございました」
ぴょこんとお辞儀をするのが可愛い。
(可愛い?)
小玉はドキドキした。
(やっぱり飲み過ぎか?)
「安藤さんはどうしたの?」
「吉本くんと…座っても良いですか?」
泣いていなかったフリをしていたが、目が赤い。
少し腰をずらして席をあけると、思いの外近くに座られた。
「さっき話してたのは安村さんか、見分けがつかなくてな」
小玉が苦笑いしていうと、岡部がぽろぽろと涙をこぼした。
「岡部くん?」
「泣いてすみません。情けないですよね」
岡部は上を向いて涙がこぼれないように必死になっている。
「何か…あった?」
岡部の目に堰を切ったような涙があふれだす。
「気持ち…悪いって、いわれました」
上を向いて嗚咽をこらえる岡部が可哀想で、その頭をそっと胸に引き寄せた。
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