序章━━ ヘリオス

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世界で一番かわいいと思う人が、 『彼女』なのはよくあるとしても。 世界で一番キレイだと思う人が、 その『父親』というのは、 そうある話ではない。 そう一人ごちても、 改めて見惚れてしまう美しさが、 この人にはある。 「ぐぇっ」 最後の一人が、 呻きだけ残して崩れ落ちた。 店員にいちゃもんをつける、 血気盛んな若者たちを。 粛正する一挙手一投足 (一蹴り一殴り)が、 完璧な美を伴っている。 それにこんな深い藍色をした瞳には、 ついぞお目にかかったことはない。 あんなに長い、上向き睫毛にも。 それが四十路男のものだというのだから、 ちゃんちゃら、おかしな話だ。
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