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「すみません、お梅さん。そういえば、母上はどこに?」
「奥様は町の寄合に。どうしても外せなかったみたいで。」
「そうか。それでは先に頂くとしよう。千華さんもくつろいでくれ。」
父親と僕、千華の3人での食事は終始楽しい時間だった。お見合いの話にはあまり触れずに、お互いの家の商売や千華の習い事の話で盛り上がったのだが、いつの間にか僕も仕事のことは忘れて久しぶりに居心地の良い時間を過ごした。気がつくと、食卓に出されていた食事や酒もあっという間に終わりに近づいていた。一通り話し終えて、この団欒の余韻を味わっている時に、父親が不意に口を開いた。
「お前が千華さんと結婚したら、どんなに良いことか。」
しこたま酒を呑んで酔った父親が今まで何となく触れずにいたお見合いの話を切り出してきたので、僕と千華は顔を合わせた。
「なんだよ、いきなり。ちょっと呑み過ぎじゃないか?」
僕は酒がなみなみと入ったお猪口に手を伸ばそうとした父親を目で制した。
「いきなりではないだろう。いつかはちゃんと話さなきゃいかんことだろうが。」
「それはそうだけど・・・。」
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