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チャプター2(現代 ある老婆と少年)
「今日もまたおばあさんの家に行くの?」
母親は食器洗いで濡れた手をエプロンで拭きながら、玄関で靴を履いていた僕に話しかけてきた。母親は昼ご飯で余ったおかずが入ったタッパを持っている。
「うん、今から行くつもり。」
「だったら、このタッパを持っていきなさい。」
僕は上着を羽織り、タッパを受け取る。
「お昼ご飯の残りだけど、手ぶらよりはいいでしょう?」
「うん、ありがとう。それじゃあ行ってきます。」
家を出た僕は老婆の家に向かうために、お気に入りのマウンテンバイクに乗る。
1年前の中学2年生の誕生日の時に父親が買ってくれたものだ。老婆の家はこのマウンテンバイクを飛ばしても大体10分はかかる。早く行かなきゃと僕はギアを最大にして、重くなったペダルを思いきり踏み込んだ。
老婆と出会ったのは、今から半年前のことだった。僕は中学校でサッカー部に所属していて、3年生ということで部長を務めている。その時もいつものように部活を終えた僕はバッグの中にジャージやスパイクを入れて、マウンテンバイクに乗った。
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