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学校を出るとすっかり日が沈んでいて、辺り一面に夜の闇が広がっていた。急いで帰らないと母親が心配すると思った僕は、普段はあまり使わない近道で帰ろうと自転車のライトを点けた。
その近道はいつもの道と違い、舗装も満足にされていない砂利道で街灯も極端に少ないので出来れば使いたくない道なのだが、部活の終わりが遅かったあの夜だけは仕方がなかった。
砂利道をしばらく走っているとT字路が見えてくるので、僕はそれを左に曲がった。道沿いには年季の入った民家が点在しているだけで人通りや街灯はさらに少なくなって、まるで真っ暗なトンネルをくぐっているかのように少し不気味で暗い。
僕に娘がいたとしたら、この道からは絶対に通わせないだろう。自転車に乗っている男の僕でも少し怖いのだから。
ドン。
そんなことを思っていたら、大きな爆発音とともに点在していた民家の1つから突然まばゆい閃光が放たれた。
「うわっ。」
ハイビームにした車のライト以上の光がいきなり視界に入ってしまった僕はペダルから足を踏み外し、先程の光を放った民家の前で派手に転倒した。
そのはずみでカゴの中に入っていたバッグが飛び出して、その民家の引き戸に当たってしまった。これはまずいと思った僕は慌てて立ち上がりバッグを拾う。
中から人が出てくる気配がなかったので、気づかれる前に早めに立ち去ろうとしたその時だった。
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