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「そうだが・・・何で知っている?」
「いや、町の噂で聞きまして。本当にそうだったのかな、と。」
今川はゆっくりとした動作で庭園のある二か所を指差した。
「それは本当の話だな。陣内雪名はあの池の近くでうつ伏せになって倒れておったらしい。そして、あそこの階段付近には陣内家の家臣が仰向けの状態で倒れていたと聞いた。戦中に殺されたみたいだから、俺はこれ以上のことは分からん。その2人の死体も俺が片付けたわけではないしな。」
今川の目には戦後の光景が浮かんでいるのだろうか、細い目をさらに細めて首を捻った。
「それはそうですよね。やはり陣内家の人間は皆、10日前の戦で死んでしまったのでしょうか?」
「ああ、女子供以外はそうだな。陣内家の家臣達の忠誠心はかなりのものだったようで、降伏や
投降は一切せずに最後まで向かってきたらしいからな。」
「では、1人残らず・・・ということですか?」
「そういうことになるな。」
片岡家の主君である信親は、その豪腕ぶりで有名であると同時に非情な一面も持っているという話を聞いたことがある。滅びていった陣内家のことを考えると胸が少し締め付けられるが、感傷的になっている暇など今の僕にはなかった。
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