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チャプター8(現代 金村萌)
「3階の21号室にいらっしゃいます。あちらの通路を真っ直ぐ行って頂くと左手にエレベーターがございますので、ご利用ください。」
受付の20代半ばの若いナースが丁寧に行き先を教えてくれた。地元では一番大きい病院だけあって、院内は清潔感がありナースの対応もしっかりしている。私は先程のナースが教えてくれた道を少し早足で辿っていく。
エレベーターで3階に着くと、地図が設置されていたのでそれを頼りに321号室へと向かった。私が見舞いで病院に来るのは、去年肺炎で入院した祖父以来であった。321号室に着くと、数人の名前の中に「土河勇」と書かれた札があったので、私は一呼吸置いて扉を開けた。部屋にはベッドが4つあり、そのうちの3つには人がいない。
「萌、こっちこっち。」
右奥のベッドから声がしたので、そちらに目を向けると勇が手を振っている。頭に巻かれている痛々しい包帯とは不釣り合いに、表情はリラックスしているように思える。
「ごめんな。わざわざ放課後に来てもらって。」
私はベッドのそばに置いてあるパイプ椅子に座った。
「当り前でしょ?彼女なんだから。」
私はそっと包帯に触れた。
「大丈夫?やっぱりまだ痛む?」
「最初はな、麻酔が切れた後は特に。今は時々痛む程度だから、そんなに心配するな。」
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