7人が本棚に入れています
本棚に追加
チャプター9(現代 土河勇⑤)
「ついに脚本が出来上がったのか?俺にも見せてくれよ。」
島田は机の上に置かれた原稿を我先にと身を乗り出して、手に取る。
「うん、昨日やっとね。まずここにいる皆に出来あがったことを伝えたくて持って来たんだよ。」
原稿用紙をクリップで止めただけで、まだちゃんとした冊子になっていないが、誰に見せても恥ずかしくない脚本を書き上げたという自信はあった。
「書き始めたのは確か3月からだから、この2、3ヶ月でよく書き終わったよね。」
束になった原稿用紙と僕の顔を交互に見ながら、萌は感慨深げに言う。
「俺の力だけじゃないよ。佐山の協力もあったしね。歴史に関して色々相談に乗ってもらったからさ。」
佐山は用事があったらしく、今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り出すと同時に帰ってしまって、今ここにはいない。無口で無愛想なところと猫背気味な姿勢は相変わらずだが、気が付けばそんな佐山も演劇部の一員として僕達と共に行動することが多くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!