7人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにおばあさんとあの本の協力もあったからこそ、だよね?」
それはもちろんだ。この脚本のモチーフは紛れもなくあの老婆が貸してくれたあの本なのだから。
「おばあさん?誰のこと?」
先程から黙々と原稿を読んでいた島田が僕の顔を見て聞く。そういえば島田にはあの老婆のことを話していなかったと思い、公園での老婆との出会いと本を貸してもらった経緯を簡単に説明した。
「ふーん、なるほどね、そんなおばあさんがいたんだ。そのおかげで出来上がったんだもんな。そのおばあさんには感謝しなくちゃな。」
「うん、それと9月の劇にも来てもらう予定なんだ。少しでも恩返し出来ればいいと思ってるよ。」
「そうだな。あと3ヶ月で本番だからな。良いものを作ろうぜ。」
島田はそう言って、勢い良く立ち上がる。転校生である島田が去年の9月頃に演劇部に入ってから、部全体に活気が出てきている。島田がムードメーカー的役割を担ってくれていることに、部長である僕は何度も助けられているなと改めて感じた。
始めから終わりまで全て1人で何かをやり遂げて得られる達成感は自己満足でしかないのかもしれない。何事に於いても、複数の人間が一丸となって何かをやり遂げ、またそれを複数の人間によって評価された時に初めて本当の達成感が感じられると僕は思っている。
つまり、僕にとってそれは劇を意味している。
最初のコメントを投稿しよう!