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「そうですか・・・。でも武田さんがご無事で何よりです。」
「私は誰よりも安全な場所に居ただけで、何も出来ませんでした。」
武田は力なく首を左右に振った。心の一部分をどこかに置いてきたのか、もしくは捨ててきてしまったのだろうか。しかし戦や争いとは、今の武田のように人間にとって影響や意味を与え続けるものであってほしいと僕は思っている。
そんなことを思う僕はまだまだ戦やあらゆる物事の片鱗さえ見えていないのだろうか?
だが、戦で経験した全てを必死にもがき消化しようとしている武田を見ていると、切実にそう願ってしまう。
「そういえば小林さん、先程今川さんとも先日の戦の話をされてましたよね?」
「ええ。戦が終わった後の遺体や城内の片付けが大変だったみたいですね。」
「その話なんですがね、先程お2人がしていた会話の中で1つ間違っていた点がありまして。」
「間違い・・・ですか?」
武田は周囲を見渡して、一歩だけ僕の方に近づいてきた。大きな声で話せる内容ではないということだろう。
「陣内家の家臣は全滅していないかもしれません。」
「え?」
「1人だけ。まだ生きているかもしれません。」
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