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「うん、作ろう。皆で。」
僕の言葉に島田は深く頷いた。
「明日か明後日にはこの原稿を冊子にして部員全員に配るのか?」
僕と萌、島田の3人より少し外れた席に座っていた唐津が訊いてきた。劇用の舞台セットや衣装などは、この唐津を中心に4人の人間が1つのチームとなって作ってくれている。
僕はそのチームを唐津班と呼んでいる。
「そうだな。明後日までには全員に冊子を配って、それから本格的に稽古も始めようと思ってるよ。」
「分かった。俺達美術班は通し稽古までには、全て用意しておけばいいんだな。」
唐津は常に携帯している大きめの手帳にペンを走らせる。夢中で何かを書いている唐津の横顔を見て、9月の劇に向けていよいよ動き出したと実感した。
「それじゃあ、なんかひと雨来そうだし今日はこの辺でお開きとしようか。皆、色々と頼むよ。」
窓の外を見ると、薄暗い空に雨を降らせそうな黒い雲が点在している。僕の緊張感が伝わったのか、他の3人は僕を真っ直ぐ見つめてほぼ同時に頷いた。
「僕は少し学校に残って準備する。」
そう言って立ち上がった唐津につられるように島田も席を立った。
「手伝うよ、唐津。俺はどうせ家に帰ってもすることないし。」
「そっか、分かった。じゃあ僕と萌は先に帰らせてもらうよ。原稿を早く編集しなくちゃいけないしな。」
「そうだね、じゃあまた明日ね。島田君、唐津君。」
僕も原稿をバッグに入れて、立ち上がった。一瞬佐山の顔がよぎった。出来れば今日のうちに原稿を読んでほしかったのだが、それは冊子になってからでもいいと判断して、とりあえず萌を家まで送ることにした。
「じゃあ俺達は先に帰ろうか、萌。」
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