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そんな僕を促すように先程よりも倍以上の大きさになっている雲が雨を降らせ始めた。
近道をするために3月にあの老婆と出会った公園に入る。
夜ということで辺りは薄暗く、公園内に人気はほとんどない。遠くの方でジョギングをしている男性がいる程度だった。ここの公園はこの地域でも割と規模が大きい所で出入り口が3つある。しばらく歩くと左手に細い砂利道が見えてくるので、僕はいつものように左に曲がった。
いつもと違ったのは曲がった後すぐに見えるはずのコンビニを遮っている人間が真正面に立っていたことだった。
僕の真正面に立つその人間は全身を黒一色に統一していて、顔はフードに隠れていて見えないが体格的に男であること、この男が異様な雰囲気を放っていることは分かった。少し身構えながら一歩ずつ近づいていっても、男が僕に話しかけてくる素振りはない。
「すみません。」
小声で断りを入れて、そのまま男を横切ろうと早足ですれ違ったその瞬間だった。
ドン。
後頭部から今までに感じたことのない鋭い痛みが一瞬にして僕の全身を駆け巡った。
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