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雨にぬかるんだ砂利道に前のめりで倒れる。倒れたことが認識出来た後にかろうじて自分にまだ意識が残っていることに気付いた。
一体何が起こったのか?どうしてこんな状況に陥った?そんな疑問が痛み以上に身体中をのた打ち回る。
断続的に光る赤いランプ、ひたすら繰り返されるアラーム音、勢い良く水が飛び出す天井のスプリンクラー、逃げろ逃げろと避難を繰り返し促すアナウンス。そして、その状況の中で1人倒れている僕。そんなイメージが僕の頭をよぎって勝手に回り出す。これが走馬灯というやつなのか?
ふと先に目をやると、この非常の事態から助かったことへの喜びをお互いに分かち合ってくれるはずのたくさんの人達がいる。あそこを必死に目指そうと僕はスプリンクラーでびしょ濡れなった身体に鞭を打つように全身を動かそうとした。
しばらくそのままでいると、傍で雨音とは別の物音が聞こえてきた。
おそらくフードの男が僕のバッグの中を漁っているのだろうと直感的に思った。そして、徐々に足音が遠ざかっていく。また周囲に夜本来の静寂が訪れて、フードの男の気配がなくなっていた。
危機的状況を何とか回避できた安心感と遅れてやってきた痛みが僕を闇へと誘っていく。それからどのくらい経っただろうか、しばらくして僕の視界は夜よりも暗く深い暗闇に包まれていた。
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