チャプター4(現代 土河勇②)

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チャプター4(現代 土河勇②)

「ここはテスト範囲でもないし、重要なところじゃないから飛ばすぞ。」 僕の担任である斎藤先生はそう言って、教科書を2,3ページめくった。 飛ばすと言ったページには、戦国時代の文化や土埼城の変という聞いたこともないような事件について書かれてあった。 昼休み直後の5時間目の授業ということもあり、僕のクラスは心なしか皆眠そうな顔をしている。特に母親の作った弁当を食べた上に学食で売っていた焼きそばパンを平らげた僕には、おそらく他のクラスメートの倍以上に強烈な睡魔が襲ってきているのではないだろうか。 僕達のクラスの担任であり、日本史の先生でもある斎藤先生は普段は冗談ばかり言う優しい人なのだが、授業や風紀を乱す生徒に対しては真逆の性格に変貌する。 そのため、斎藤先生の授業の時は寝てはいけない、騒いではいけないというのが僕達生徒の中で暗黙の了解となっている。しかし、それを意識しすぎるが故に、何人もの生徒が睡魔に負け、斎藤先生に雷を落とされているのだが。 「明智光秀が織田信長に下剋上をした事変、分かる奴いるか?そうだな・・・じゃあ、土河。」 睡魔から逃げることに必死で自分の名前が呼ばれたのにもかかわらず、僕はすぐに反応することが出来なかった。 「おーい、土河(つちかわ)勇。こんな簡単な問題に、何を鳩が豆鉄砲くらったような顔をしている。答えろ。」 先生の質問を全く聞いていなかったのはもちろんのこと、あまり得意ではない日本史なので、僕の思考は完全に袋小路に迷い込んでしまった。雷雲は間もなく僕の頭上にかかりそうなところまで来ている気がした。
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