ひなと小さなパティスリー

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ある日、ひなは初めてフリーマーケットに行った。ママに何か一つひなの好きなものを買ってもらえると言われて、ワクワクしていると、おばあさんに、ティーセットを勧められた。 ひながいらないと言うと、おばあさんは、ティーセットを買ったら、陶器のうさぎの人形と同じく陶器で出来たパテスリーをプレゼントすると言った。 ひなは嫌だったが、ママはひなの買い物をこれに決めてしまった。 帰り道、ひなはずっと機嫌が悪かった。機嫌が悪いひなに、ママはホットミルクとパウンドケーキを作った。ひなが1番大好きなおやつだった。 おやつを食べ終わると、誰かに名前を呼ばれた。ひなは辺りを見渡したが、誰もいない。何度も呼ばれ、声はおばあさんから買ったパテスリーの中でいたうさぎの人形が自己紹介をした。 それから、ひなを自分のパテスリーにパウンドケーキを食べに来るようにさそった。 うさぎの人形の名前はラビー。この日からひなとラビーは仲良くなった。 ラビーが扉の前で魔法の言葉を唱えるとひなの体がラビーと同じ位になった。ひなはラビーと一緒にパテスリーの中に入った。今までひなが見たどんなお店よりも素敵だった。 ラビーはひなに、お菓子づくりに必要な材料が欲しいと言った。どれもママに気づかれない位少しの量だった。 ひながパテスリーから出ると体は元の大きさに戻り、パテスリーの中のラビーは元の動かない陶器の人形に戻っていた。 翌日、ひなは材料を持って、パテスリーに入った。 ラビーはひなを素敵なテーブル席に案内した。椅子を引いて、ひなを座らせ、ティーセットを運んだ。 ティーカップにホットミルクを注ぎ、焼き上がったパウンドケーキをお皿に載せてくれた。 どちらも口いっぱいに優しい甘さが広がって、とっても幸せな気持ちになった。 お腹いっぱい食べたのに、パテスリーの外に出ると、お腹が空いて、夜ご飯も残さず食べれた。 それからひなは、ラビーのパテスリーの常連さんになった。 ひなが大きくなるにつれて、ラビーのお店に行くことは無くなり、大人になると、ラビーのこともすっかり記憶から無くなった。 ラビーは、暗い物置きの中で、静かにパテスリーを守り続けた。 やがて、ひなに子供が産まれると、ラビーはまた日の光を浴びた。 ラビーにまた、小さな常連さんが一人できた。
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