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、平飼いだから肉が締まってるの!噛めば噛むほどおいしいから、しっかり噛んでね。ご飯入れたらあまり時間置かないよ。柔らかくなる前にどんどん食べてね」
話をしながら、手際よく細く裂いた肉を出汁の入った鍋に投入してさっと混ぜる。
「このくらいでよかとな」
お椀によそって、シイタケ、錦糸卵、アサツキに刻みのりを乗せた後「召し上がれ!」と元気に手渡された。
「いただきます」と言うと、すぐに次の客のところに行って楽し気に話している。
そんな女将さんの背を目で追った後、坂元くんに視線を戻す。
「山崎さん、今日はずっと笑顔でしたね」
「え?あれ、俺これまでそんなに笑ってなかった?」
「最初会った時は、顔の筋肉が固まっているのかと思うくらい表情がかたかったですよ」
「うーん、こっちの人と話してるとみんなニコニコしてるから、つられて笑えるようになってるのかな。あとは坂元くんの鍼のおかげだな」
鶏飯をかきこんで、むぐむぐ咀嚼して飲み込んだあと、坂元くんが嬉しそうな顔で言う。
「そう言ってもらえるとすごく嬉しいです…山崎さんは、マッサージの反応がよかったです。触れたところからどんどん緩んでゆくのが分かりました」
こっちは治療してもらっただけなのに、何だか褒められたようで嬉しくなる。
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