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鶏飯を頬張りながら、何気なく質問した。 「若い男性のマッサージ師ってあまりイメージがなかったんだけど、どうしてなろうと思ったの?」 正直、見た目も人当たりもいいから営業のお仕事したら結構稼げるんじゃないか、と余計な事を考える。 少し間が空いた。あ、面接みたいな事聞いて白けちゃったかな。 彼は一旦視線を外して、少し考えた後こっちを見て口元だけで笑った。 そしてそのあと続いた言葉に、聞いた事を後悔した。 「大切な人が、病気になったんです。その時にちょっとでも快適に過ごせれば、って思ってマッサージの勉強を始めたんです。学校を卒業する前に…..その人は死んでしまったんですけど、僕はそのままマッサージ師になったんです」 まさに面接の模範解答の様に短くまとめて、よどみなく答えた。もうそれ以上聞いてくれるなと言うように。 「それは…無神経なこと聞いてしまってごめん…なんと言っていいか」 「大丈夫です、気にしないでください」 ふるふると首を振り、今度は丁寧に作った笑顔を浮かべた。 少しよそよそしくなった空気の中、悲しい事を思い出させた罪悪感を感じながら、そんな風に現在の坂元くんまで規定している"大切な人”を羨ましく思った。
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