98人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
3
坂元くんはパーカーの上にコートを羽織って待ち合わせの場所に現れた。
マッサージに来てくれた時の無難なポロシャツ姿とは大分印象が違う。その力の入ってなさが彼の自然な優しさによく合っている。
連れて行ってくれたのは、彼が中学卒業まで育ったと言う奄美の料理店だった。
紬を着た女将さんは丸顔にくっきりした目鼻立ちがかわいらしい南方系美人で、やっぱり話が止まらない。
「ルイトくん、久しぶりね!元気だった?今日は年上のお友達と一緒だね、よかにせふたりで歩いてると女の子が放っておかないんじゃない。イケメンとダンディでいれぐいだね」とケラケラ笑う。
当の本人は「いれぐいってなんですか?」とか言っている。
年上と言われたが、それを通り越して親子程離れている。普段自分の年齢を意識する事はあまりないのに、こうやって自覚を促されるんだ。
ルイト、なんて漢字すら思いつかない名前も、いかにも平成生まれっぽい。
「ここの鶏飯食べてもらいたくって、でもまずは黒糖焼酎かな」
「鶏飯はね、鶏を使ってるところが多いんだけどね、うちは|軍鶏《シャモ>
最初のコメントを投稿しよう!