ウィリアム・ジェンキンス卿

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ウィリアム・ジェンキンス卿

 三から数え下げて手がなると、キミは目が覚める。  「おはよう」  ぼうっとした眠りから覚めると、私の目の前に見知らぬ男がいる。整った顔立ちだが、ニヤニヤとした笑い方が気に食わない。綺麗な青い目をしているがなんとも不気味な輝きがある。  「まず、ここはどこ」  「おっと、気の強い女の子は嫌いじゃないよ。ここはロンドン。時は二〇一七年十一月だ」  「つぎに、あなたはだれ」  男の口の端がぐいっと釣り上がる。が、それを抑えようとしているのか、口の形が歪み、それにつられて目が細くなる。瞳がランプの光を反射して濡れたように光る。  「それを言っては、まあおしまいだ。私の名前は最後に教えてあげるよ。まあ、落ち着いて。深呼吸しようか。さあ、リードしてあげるから。吸って、吐いて。吸って、吐いて。吸って、吐いて。ほら、落ち着いて来ただろう。」  確かに落ち着くことは大切だ。こと、こんなわけのわからない状況では。腕も、足も椅子に縛り付けられていては何もできない。いい策が思いつくまでは落ち着くことも必要だ。  「ふむ、落ち着いてくれたようで何よりだ。さて、もっと落ち着いてもらうために、ひとつ話をしてあげようか。」     
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